新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、これまで外出を控えていたとみられる10代と70代以上の人出が7月中旬ごろから、他の年代並みに回復し始めたことが23日、位置情報を基にした人出のデータの分析で分かった。収束が見通せない中、「気の緩み」が全世代に及んでいる可能性がある。年末年始は新年準備の買い出しや初詣など、とりわけ高齢者らにとっての外出機会も増えるが、専門家は「この冬が一番の山場。高齢者は重症化しやすく、人との接触を控えてほしい」と訴えている。(荒船清太)
システム会社「クロスロケーションズ」がスマートフォンのアプリの位置情報を基に提供する人出データを使用。東京と京都の中心部の年代別の7日間平均人出を昨年同時期と比べた。
データによると、人出は緊急事態宣言が出された4月以降急減し、5月初旬は各年代で前年同時期の20%台になった。6月初旬には20~60代の人出は前年の50%前後にまで戻ったが、10代と70代以上は40%台前半にとどまっていた。
10代と70代以上の回復率は他の年代に引き離された状態が続いたが、政府の観光支援事業「Go To トラベル」キャンペーンが始まる前後の7月中旬ごろから、他の年代の人出が鈍る中で急回復し、ほぼ他の年代に追い付いた。その後は全年齢層で人出が昨年の7割超にまで戻った。
感染者の年齢層も同じころから中高年に移行し始めた。
7月の東京都内の感染者に占める70代以上の割合は数%、40代以上でも20%超だったのが、11月にはそれぞれ10%前後と50%前後にまで上昇している。7月には10人前後だった重症者の総数も40人前後に増えている。
感染経路はこれまで主流だった夜の街から家庭内や施設内が増え始めている。
東京医科大の濱田篤郎教授(渡航医学)は「高齢者の人出の増加が高齢者の感染の増加に直接結びついたとはいえない」と指摘する。その上で、「社会的な雰囲気が『出ていい』となり、高齢者にも気の緩みが生じた可能性がある」と分析する。
懸念されるのは、年末年始にかけて、親族の集まりやお歳暮の買い出し、初詣など、高齢者が外出する機会がさらに増えるとみられることだ。
濱田教授は温度や湿度がウイルスの生存に適している来年1月ごろが感染のピークになるとみており、「今冬の催しへの出席は控えて、高齢者は人との接触を避けてほしい。冷たいようにみえるが、せめて食事は別々でするなどの工夫が必要だ」と訴えている。