ゴジラルームが設立される以前、東宝では、ゴジラビジネスを全社的に展開するために2014年、「ゴジラ戦略会議」、通称「ゴジコン」が創設されている。
「各部署から二十数人のゴジコンメンバーを選抜し、ゴジラに関するビジネスに取り組んできたのですが、それぞれメンバーには所属部署があり、仕事が掛け持ちでした。東宝にとって、“ゴジラ専従”の社員を持つこと、つまりゴジラ専門の新部署の設立は長年の課題だったのです」
大田CGOは、東宝の映像・音楽事業を担当する常務でもある。だが、名刺に刷られた「チーフ・ゴジラ・オフィサー(CGO)」という肩書に、東宝のゴジラに対する敬意とゴジラビジネスに懸ける並々ならぬ意気込みが伝わってくる。
ゴジラビジネスに専従するメンバーは、大田CGOを筆頭に東宝本社に5人。このほか、東宝グループのマーケティング事業を担う「TOHOマーケティング」の北海道、中部、関西、九州の各営業所にゴジラルームを設置し、本社のゴジラルームと連携しながら全国展開していく計画だ。
ゴジラ憲章の名のもとに…
東宝には“門外不出”の「ゴジラ憲章」があるという。
「詳細を明かすことはできないのですが…」と前置きしたうえで、大田CGOが、そっとその概要を教えてくれた。
〈ゴジラは圧倒的な生命力であなたの魂を揺さぶります〉
この文言をブランド・プロミスとして掲げるゴジラ憲章は、1年以上をかけて今年初めにまとめられたという。
「東宝社内で、規範とするゴジラのブランドと原則をきっちりと決めたのです」と大田CGOは語る。
ゴジラ憲章では、この約束のもとに、さらに細かく、(1)物語性(2)威厳(3)強さ(4)挑戦(5)ワクワクドキドキ-という5つの原則が設けられている。
「これら5つの原則の要素のいずれかを満たす…という基準を守りながら、映画化、イベント、商品展開などを図っていく。そこから逸脱せず、ゴジラブランドを守りながら、さらにゴジラの魅力をどう伝えていくことができるか。ゴジラルームの仕事は、今後、さらに増えていくと考えています」
なぜ、ゴジラ人気は一向に衰えないのだろうか?
ゴジラルームでは、この「ゴジラ人気」についても検証・分析していた。
「今、もっともゴジラを支持する世代は何十代だと思いますか?」と大田CGOに質問された。
“昭和生まれの高い年齢層”を想像していただけに、その答えを聞いて驚いた。
「現在、実は20代女性に一番支持されているのです。近年のヒット作『シン・ゴジラ』やハリウッド版ゴジラなどに最も影響を受けた世代なんです。彼女たちは昭和のゴジラ世代の子供世代でもありますからね」と大田CGOは分析しながら説明する。
幅広い世代に受け継がれてゆく息の長いゴジラブーム。「“淡路島に上陸したゴジラ”は、さらに新たな子供たちの世代にも受け入れられ、若年層を開拓していくはず…」と大田CGO。ゴジラルームの挑戦に、今後も要注目だ。