結婚-。会社の同僚や後輩から、この言葉が出た時、私たちが発する言葉は決まっています。
「おめでとう!」
恋愛ドラマであれば、ここでエンドロールが入ってめでたしめでたしといったところでしょうが、現実はここからが本番です。1年後、子供が生まれ、子育てに奔走する二人。抱っこをしていると、クンクン…ん? またウンチ? さっきおむつを替えたばかりなのに…。ため息をつきながらおむつを替えるその傍らで、黙々とスマホをいじる夫。「ふざけんな!」と怒り心頭の妻ですが、実は夫は取引先の急な要望に急いで返信をしていたのだとか。そんなすれ違いが積もり積もった結果、ある日、帰宅すると妻が子供を連れて家を出て行ってしまっていた。
こんな話、聞いたことありませんか? 身近にこんな経験をした方、いませんか? 仕方ないな、元気出せよ。居酒屋のカウンターでそんな感じに励ます風景が浮かんできそうですが、実はこのいわゆる「子連れ別居」なるものが、今、国際的な大問題となっているってご存じでしょうか?
日本と海外との認識のギャップ
今年の7月8日、EU議会は、日本国籍とEU籍の両方を持つ子供を日本人の親が連れ去ることを禁止するよう求める決議を採択しました。なんと、賛成686、反対・棄権9という圧倒的賛成多数で。このEU議会の決議について、日本ではあまり報道されていないようです。なので、多くの人が知らないのではないでしょうか。「子連れ別居」ならぬ「子供の連れ去り」。英語ではabductionと言って、「拉致」とか「誘拐」といったもっと刺激的な言葉になります。そう、欧米では他方配偶者に内緒で子供を連れて家を出ていくことは、犯罪として警察が動く事案なのです。
この認識のギャップは、あまりにも大きく、日本の報道があまり熱心でないことも相まって、そのギャップは埋まるどころか開く一方に見えます。そして、国際結婚が破綻したとき、日本と海外との間のこの認識のギャップが一気に露呈することになるのです。EUの非難決議は、こうした日本と海外の「子連れ別居」に関する認識のギャップがもたらす悲劇なのです。
このEUの非難決議に対して、日本政府の反応は冷ややかでした。茂木敏充外務大臣は、「決議にある『国際規約を順守していない』という指摘はまったく当たらない」とコメントし、日本が別居離婚に伴う子供の問題において、「何ら非難を受ける筋合いはない」と開き直りました。このコメントにも、その底流において、「ただの子連れ別居じゃん」という日本特有の認識が垣間見えます。たかが子連れ別居、されど子連れ別居。日本特有の慣習と言ってしまえばそれまでですが、それでもこの問題、そう一刀両断に片付けてしまってはいけない問題だと思います。なぜって、子供が関わっているから。文化とか慣習とかといった理屈抜きの言葉で押し切ってしまって、子供の本当の幸せについて考えないままで良いはずがありません。そもそも何で世界が「子連れ別居」にNO! を突き付けているのか、そのことを冷静に検討しなければなりません。もちろん、子供の視点に立って…。