政府の観光支援事業「Go To トラベル」の対象に東京都が追加されて2週間近くがたち、新型コロナウイルスの感染状況への影響が見え始めている。観光地の人出が増えた京都府で感染者が大幅に増え、都内では旅行や帰省先から戻った後に感染確認が相次ぐ。一方で国内全体では感染状況に大きな変化はみられず、旅行や帰省そのものではなく、滞在先の感染対策や個人の行動が感染拡大に反映されている可能性を指摘する声もある。
12日に12人の感染者が確認された京都府。うち40~80代の男女5人は今月3日に京都市内で開かれた会食の出席者だった。この会食には40人ほどが参加しており、5人を含む14人のクラスター(感染者集団)が発生し、大阪や東京から訪れた感染者もいるという。
京都の人出は今月1日に東京が「Go To」に追加されてから着実に回復。スマートフォンアプリなどのGPS(衛星利用測位システム)位置情報などを解析する「アグープ」(東京)によると、土日だった今月3、4日の嵐山の人出は前週より12%増加し、東京から訪れた人に限れば、2倍以上になっていた。
都内でも毎日のように旅行や帰省関連の感染事例が報告され、都の担当者は「『Go To』を利用しているかは確認されていないが、少なからず影響はあるだろう」と指摘する。
一方、北海道や宮城県は今月に入り、人出の増加はみられないものの感染者の増加が目立つ。札幌や仙台の繁華街では、接待を伴う飲食店のクラスターが複数確認されている。一方、沖縄県では観光地の国際通りの人出が22%増えているにもかかわらず、感染者は高止まりか微減している。
こうした傾向から、人出が感染者増に直結するわけではなく、感染リスクの高い場所・環境でのクラスター発生などが大きく影響しているといえそうだ。
東京医療保健大の菅原えりさ教授(感染制御学)は「コロナの特徴から人が動けば感染者がある程度増えるのは避けられないが、危惧された大幅な増加はみられない。観光に飲食は欠かせず、気が緩み、盛り上がってしまうことはあるでしょう。一人一人が緊張感を持って行動することが感染防止につながる」と話す。