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穏やかな人が突然…コロナ禍で性格・言動急変「CIAMS」が増加

 新型コロナウイルスの流行が長期化する中、普段は穏やかな人が急に怒りっぽくなるなど性格や言動が変容したとの報告が相次いでいる。診療にあたる南多摩病院(東京都八王子市)総合内科・膠原(こうげん)病内科の国松淳和(じゅんわ)部長はこうした現象を「CIAMS(シャムズ)」と命名した。目に見えない不安感が人々の心をむしばんでいるとみられ、周囲とのコミュニケーション強化を呼びかける。(三宅陽子)

 シャムズは「新型コロナ感染症が誘発する精神状態の変化」を意味する「COVID-19/Coronavirus-induced altered mental status」の頭文字から取った。国松氏は「シャムズは病気ではなく、『新型コロナで変わってしまった人たちを指す用語』と思ってもらえればいい」と説明する。

 礼儀正しかった人が…今春気付く

 国松氏がシャムズの存在に気付いたのは、国内で感染が急拡大した今春ごろ。外来診療などを通じ、新型コロナに感染していない人たちの中に、普段とはやや様子が異なる人が現れ始めていることを知った。

 穏やかで礼儀正しかった患者がある日突然、医師や看護師を怒鳴り散らす。他にも、コロナ流行前には絶対に言わないこと、やらないことをして迷走している人がいたり、頑張り過ぎている人がいたり…。「その人らしくない言動」に周囲が困惑したというエピソードが患者の家族や仲間の医療者からも届くようになり、シャムズを確信した。

 「見えない不安」、発散もできず…

 シャムズはなぜ起きるのか。背景を探っていくと見えてきたのは、新型コロナに対する「見えない不安」だった。長引く自粛生活により人とのコミュニケーションが希薄となる中で、不安は増幅。人々の間で静かに伝播(でんぱ)していっている様子もうかがえた。

 「これまでは何かに行き詰まっても、友人や同僚らと仕事帰りに飲みに行く、遊びに行くことなどで発散できた。今はそうした機会が狭められ、会話も減ったことで、多くの人がひそかに具合が悪くなっている」と国松氏は分析する。

 悪化しやすい高齢者「声かけ続けて」

 予防には、不安で凝り固まった心を早期にほぐすことが何より重要になる。

 特に高齢者はシャムズを悪化させやすく、国松氏は散歩などでの気分転換を勧める。新型コロナの話題が頻繁に流れ、視覚的に飛び込んでくるテレビを見るより、ラジオを聞く方が過敏で硬直した神経を緩和するのに効果的だという。

 国松氏は「小さな変化に気付けるのは、その人と日頃親しくしている人たち。不安は会話不足から生じることも少なくない」と指摘。「身近な人の様子がおかしいと感じたら、とにかく声をかけ続けてほしい。不安には雑談が非常に有効に働く」と訴えている。

 コロナで「ストレス」8割にも

 新型コロナウイルス感染症が精神面に与える影響は、筑波大の研究チームが行った調査の中間結果(8月4~10日、有効回答約7千人分)でも明らかとなっている。

 直近1カ月間の新型コロナに関するストレスを尋ねたところ「とても感じた」「少し感じた」を合わせ、約8割がストレス下にあったと回答。国内で感染が広がった2月以降に経験したこと(複数回答)は、「自分が感染する危険があった」が最も多く、「自粛で仕事や学校に支障が生じた」「家族が感染する危険があった」-が続いた。

 自粛中有効だった生活上の対処法(同)は「自宅でできる活動を楽しむ」「十分な睡眠をとる」「新型コロナに関する正しい情報を取り入れる」が目立った。

 規則正しい生活や前向きな試み重要

 研究代表者で同大の太刀川弘和教授(災害・地域精神医学)は「コロナ禍のストレス度は、国内外で高い傾向が見られる」と説明。「感染拡大で人々は強い恐怖を持った一方、心身の調子を保つ上では、規則正しい生活やポジティブな試みが重要な要素となり得ることもうかがえた」と話す。

 今後、新型コロナと鬱(うつ)症状、心的外傷後ストレス障害(PTSD)との関連などの分析も進めるという。

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