一方、卵巣の腺がんでは、原発(元のがん)の卵巣腫瘍の切除に加えて、対側の卵巣、子宮、大網、骨盤・傍大動脈リンパ節の切除を行うのが標準治療ですが、これにより妊娠の可能性はなくなります。
Q 残りの卵巣を切除するか、決断がつきません。
A 今回は左の卵巣の茎捻転を治療するための緊急手術でした。茎捻転は卵巣の栄養血管が通過する卵管間膜が360度ほど、何らかの原因でねじれるもので、激痛が起きたのはこのためでした。手術では左の卵巣・卵管は切除されました。しかし、右の卵巣は腫瘍のみの切除となり、卵巣の一部が残存しています。もし、この残存卵巣を切除すると、妊娠の可能性が失われます。妊娠可能な状態を保つために温存手術を適用することもあります。
Q 治療を優先するか、妊娠の可能性を残すかの選択でしょうか。
A 90%以上の寛(かん)解(かい)を期待するために、生命優先で残存卵巣を切除するのが標準治療です。ただ、妊娠の可能性などを考えれば、悩み深い判断になります。(構成 大家俊夫)
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【ミニ解説】若年男女に多く発症
未分化胚細胞腫は、若年の男女に多く発症する疾患だ。女性は卵巣胚細胞、男性は精子の母細胞から発生し、しばしば、腹部大動脈周囲のリンパ節に転移する。
男女の未分化胚細胞腫の治療について、瀧澤医師は「原発の卵巣あるいは精巣の切除に加えて、BEP療法を4~6サイクル受ければ、90%以上は寛解します」と解説する。
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回答は、がん研有明病院の瀧澤憲医師(婦人科前部長)が担当しました。
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