お金で損する人・得する人

平均寿命がまた延びた 女性の2人に1人が90歳時代のお金の考え方 (1/2ページ)

高橋成壽
高橋成壽

 令和2年7月末、厚生労働省が「令和元年簡易生命表」を発表しました。簡易生命表は、日本にいる日本人について、各年齢の人が1年以内に死亡する確率(死亡率)、平均してあと何年生きられるか(平均余命)をあらわしたものです。簡易生命表における0歳の平均余命を平均寿命といい、毎年発表されています。男性81.41歳、女性87.45歳はともに過去最高の平均寿命となり、男性は世界3位、女性は世界2位の水準です。簡易生命表からわかることはなんでしょうか?

 90歳以上生きるのは女性の51%超、男性の27%超

 簡易生命表を見ていると「長生き」している人がどれほど多いかわかります。下表は年齢ごとの生存率(生存数/10万人×100)です。

 例えば後期高齢者と呼ばれる年齢である75歳を見てみると、男性75.85%、女性88.22%の生存率となります。男性の4人に3人、女性の10人に9人は後期高齢者に突入することを意味します。

 90歳は「すごく長生き」どころか、当たり前になっている現実があります。実際、男性は27.18%、女性は51.12%の生存率です。男性の4人に1人、女性の2人に1人は令和元年の時点で90歳まで生きていると考えることができます。

 平均寿命は長生きとは言わない

 皆さんは平均寿命と聞くと、かなり長生きしている印象をもたないでしょうか?筆者がセミナーや講演会などで、「平均寿命まで長生きするかもしれないと考えている人は手を挙げてください」と問うと、男性はあまり手が挙がりません。女性の挙手は男性よりも多いのですが、参加者の2割~3割程度と少なめです。

 すでにこの記事を読まれている人は、そんなに少ないわけがないと感じていると思います。男性は平均寿命である81歳の生存率は61.31%、女性は平均寿命である87歳の生存率は63.71%になります。それぞれの性別で6割以上の人は平均寿命までに亡くなることがありません。平均寿命までに亡くなる人の方が少ないため、若くして亡くなったと言えるのです。

 先日とあるメーカーのライフプラン研修でこの事実をお伝えしたところ、参加された人たちはそれぞれ危機感を抱いたようで、研修の受講姿勢も変化しました。「斜に構えていたが数字を知って驚いた」と数字に強い仕事ならではの納得感があったようです。

 通常、ライフプラン研修は労働組合主催であったり企業が主催したりする場合、定年を控えた50歳、55歳に対する集合研修として実施されます。おそらく企画者の意図は、老後困らないよう最低限の知識を伝えて老後を迎えてもらうということでしょう。定年後に資産がつきて犯罪に手を染めるような事態になった時、元の所属先として会社名が出るのは不名誉なことですし、企業のブランドイメージに関わります。

 一方で、一般的には企業にとって人生設計のニーズは高くありません。理由は、不都合な真実が明るみに出てしまうからに他なりません。つまり、老後のお金が圧倒的に足りなくなるのです。老後資金が充足するのは、一部の大企業のように企業年金が毎月数十万円出ているようなケースのみ。今の収入で老後資金の準備ができないのであれば、選択肢として「転職」が高い優先順位になってしまいます。一括採用、横一線の給与体系で進めてきた企業は、この事実に向き合わないことが多いのが筆者の肌感覚です。一部、会社自体が若い場合は、従業員の支援という名目でのライフプラン研修を依頼されることがありますが、内容は結婚、出産、マイホーム購入などで若手会社員がむちゃな計画を立てないようにする意図もあります。

 お金の準備は男性90歳、女性100歳まで考える

 老後の生活資金が足りないとわかって即転職する人は多くありません。むしろ、今の会社でしっかり勤めよう、キチンと昇給、昇格を計画して真摯に仕事に取り組もうという就労意欲が増す人が多いと感じます。

 そもそも、人生設計を通じて老後資金が足りないと理解できたときに責めるべきは勤務先ではないのです。年金制度を憎むべきでもありません。実態は、寿命の延びに制度が追い付いていないのです。そもそも、60歳定年、65歳定年を実施したところで、老後と呼ばれる定年後の期間が30年~40年あれば老後資金が足りなくなるのは当然です。

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