高タンパク・低脂肪 町おこし活用も
日本ではなじみの薄いダチョウ肉のおいしさを知ってもらおうと、生産者や自治体が普及に取り組んでいる。牛や豚に比べ少ない餌で育ち「環境に優しい」とされ、早く成長するため生産効率も高い。高タンパク・低脂肪なことから「ヘルシーなのに食べ応えがある」と人気も出ている。
茨城県西部の田園地帯。柵で仕切った放牧場で、体長1.6メートル前後のダチョウ数羽が、地面を掘ったり羽をばたつかせたりして過ごしていた。「あと2、3カ月すれば食べごろ。レアかミディアムレアで調理するのがおすすめ」。食べ方を伝授する牧場経営者、加藤貴之さん(33)はそう話す。
9年前。東日本大震災で勤務先だった映像制作会社の仕事が激減し、将来を見つめ直していた。知人が調理したダチョウ肉のカルパッチョを偶然試食し、おいしさに感激して脱サラを決意。知人の畜産家の下で生態や飼育法を一から習得した。
昨年秋に茨城県筑西市に牧場「クイーンズオーストリッチつくば」を開き15羽を飼育する。「臭いも鳴き声もほとんどないので、近隣への影響が少ない。注文は徐々に増え、リピーターもいる」
生産者らでつくる日本オーストリッチ協議会(千葉県栄町)によると、ダチョウはアフリカ原産で世界最大の鳥。時速60キロで走るが飛べない。1年で体長2~2.5メートル、体重100キロ前後になる。草食でえさの量はカロリー換算で牛の20%程度だが、肉の価格は1キロ当たり4000~5000円ほどで和牛と同程度だ。低コストで大きく育つ利点を生かし、協議会は畜産業として根付かせたい考えだ。
だが現在食肉処理されるのは年間約2000羽。繁殖力が強く雌は年40個前後の卵を産むが、ふ化しないものや、ひなの段階で死ぬ場合も多い。好奇心旺盛で異物の誤飲や自傷する事故もつきもので、生産者の技術や設備の向上が求められている。
町おこしに活用する自治体も。山形県朝日町は、約2年前から地元産ダチョウのハムやソーセージをふるさと納税の返礼品で扱っている。定番特産品のリンゴやワインのほかに新産業を創出しようと、地元の食肉加工会社が1998年に9羽を輸入したのが始まりで、現在は道の駅や土産物店で加工肉や卵を使ったアイスクリームが買える。