新型コロナウイルス感染状況の分析から、感染拡大が判明する前段階で、水面下で感染が広がっていた実態が判明した。分析にあたった東京歯科大学市川総合病院呼吸器内科の寺嶋毅教授は、発症直後に陽性が確認され、入院や療養となった場合、ピーク時の実効再生産数は4割程度に抑えられると試算。第2波で感染者を抑えるには、迅速な検査体制に加え、軽症者が療養するホテルなどの宿泊施設を含めた医療体制という両輪での強化が急務だ。
寺嶋氏は千葉県の5月20日までの約670症例を分析し、発症翌日に検査を受けて陽性が確認された場合の実効再生産数を試算した。
実効再生産数が感染拡大傾向を示す「1を超えた日数」は、実際の感染状況では3月9日から4月1日まで20日間以上確認されたが、試算では1日にとどまった。ピーク時の値は実際が2・8(3月24日)だった一方、試算では1・1(3月26日)だった。
発症してから検査で陽性が確認されるまでの日数が増えれば、他人に感染させるリスクは高まる。今回の分析では平均7日間で、最長は23日間だった。千葉県の公表資料によると、最長だった感染者は3月30日に発症し、4月22日に検査で陽性が判明。他人にウイルスをうつす可能性があるとされる発症2日前からは、自宅や職場での行動が確認されたという。
寺嶋氏は「発症後、すみやかに検査を受けて陽性が確認されれば、その時点で療養が始まり、以降はその陽性者からの感染拡大を防ぐことができる」と指摘。感染者の洗い出しを進めれば一時的に感染者数が増加するため、「医療提供体制の崩壊を招かないためにも、軽症者を受け入れる宿泊施設の確保を準備しておく必要がある」とした。
政府の専門家会議も、早期診断で、早期の医療提供や感染拡大防止につなげる必要性を訴えている。
5月の提言では、PCR検査について、「4月上旬から中旬の感染者数の増大がみられた時期に迅速に行えなかった」とした。検査体制拡充の具体策として、PCR検査よりも精度は劣るものの、短時間で結果が出る抗原検査の活用も挙げた。
医療提供体制についても、クラスター(感染者集団)が突然発生することを想定し、最低限必要な病床数を空床にするなどして確保しておくほか、軽症者の宿泊療養施設は常に一定数以上確保しておくことが必要だとしている。