北九州市で新型コロナウイルスの感染者の増加が続いている背景には、従来なら対象外だった無症状の濃厚接触者にもPCR検査を行っていることがある。感染拡大を早期に食い止める狙いがあり、厚生労働省も今後、全ての濃厚接触者に検査を実施する意向を都道府県に伝えた。こうした検査拡充は埋没していた感染者を急激に顕在化させる恐れがある一方、第2波の兆候を的確に察知できることが期待される。
北九州市では5月23日から連日感染が確認され、今月1日までの感染者計113人のうち感染経路不明が36人、その同僚ら濃厚接触者が77人。濃厚接触者の中では、少なくとも7割にあたる54人はPCR検査時に無症状だった。
市はこれまで濃厚接触者の場合、無症状であれば2週間の自宅待機と経過観察としていたが、感染の再拡大の兆候を受け「集団感染の芽を早めにつぶす必要がある」(担当者)と判断。症状の有無にかかわらず、濃厚接触者全員を検査対象とすることを決めた。
4月末までに感染者が一度収束したほか、5月2日にドライブスルー方式の検査が運用開始するなど検査態勢に余裕が出ていたことも決断を後押し。現在は市だけで1日96件の検査能力があり、不足分は福岡県や福岡市が数十件補う態勢も整っているという。
結果的に、医療機関3カ所と介護施設1カ所でクラスター(感染者集団)が発生し、市立小学校でも無症状の4人を含む児童5人の感染が発覚した。一方で、感染経路不明の割合は日ごとに下がり、現在は3割程度に落ち着いている。
市の担当者は「無症状の感染者を早い段階で捕捉し、病院や療養施設に隔離することで3次感染を防げる。今後は感染者増大の速度が収まっていくことを期待している」と話した。