天王寺動物園の休園中の大きな出来事といえば、4月7日に生まれたキリンの赤ちゃんが1週間後に死んだことだ。平成30年5月に生まれた子もすぐに死亡したので、「今度こそ」と期待していた担当者らを悲しませた。
動物園では死と向き合う一方、希少動物の種の保存にも力を入れている。休園中だからこそ落ち着いて実施できる仕事がこの繁殖だ。
この休園中、ジャガーのペアの同居が試みられた。2年前にパートナーを失った雌のルースと、昨年上海からやってきた雄のロンだ。半年以上、別の放飼場に入れて、檻越しのお見合いをしてきた。
大型動物の初めての同居は、けんかが起きては大変なので緊張を強いられる。通常であれば定時休園日に行われるが、今回は長い休みの間にゆっくり取り組んだ。静かな環境のせいか、さっそく交尾を始めたといい、繁殖への期待は高まる。
ちなみに同園のスター、ホッキョクグマのゴーゴとイッちゃんも初めての繁殖シーズンを迎えたようだ。休園中で熱愛の様子が見られないのは残念だが、ぜひかわいい赤ちゃんの姿を見せてほしい。
センイチに恋をして
肉食動物エリアに差しかかると、木陰で雄のライオンが爆睡していた。「ライオンは普段でも寝ているんですけど、今はもっと寝ている」(西岡さん)。野生のライオンはいざというときに力を発揮するため寝て力を蓄えるが、開園中の動物園ではどうしてもお客さんが手をたたいたり、大きな声で呼んだりしてよく起こされてしまう。今はストレスから解放されているのかもしれない。
さて、同園の人気投票で常に1、2位を争うのがアムールトラ。理由はプロ野球の阪神ファンが多いからとか。名前も、かつて阪神タイガースを率いた星野仙一監督から命名された。昨年9月に飼育していた虎二郎(こじろう)が死に、同園のアムールトラはセンイチだけ。雄では国内最高齢の16歳。
帰り際、室内展示室をのぞくと、センイチと目が合った。ゆっくりと体を起こし、悠然とたたずむ姿は迫力満点。格好いい!
ガラスの方へ近づいてきたかと思うと、クルリと方向転換。しかし、こちらが歩きだすと再びガラスに近づき、頭をコツンコツンとぶつけてきた。まるで「行くな」と言っているようだ。
再開日はまだ決まっていないが、動物たちはいつもと変わらぬ姿で、その日を待っている。