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奈良のシカ、保護出動が例年の2倍に

 国の天然記念物「奈良のシカ」が2月以降、生息地の奈良公園(奈良市)から離れたエリアに頻繁に出没し、保護活動に取り組む奈良の鹿愛護会が対応に追われている。2~4月の出動回数は例年の2倍に増加しており、同会は「この時期、シカが街中に出るのは毎年のことだが、今年はいつになく頻度が多い」。なぜなのか。(桑島浩任)

 「長く奈良で暮らしているけど、日中にならまちを集団で歩くシカを見たことはない」

 地元FM局でパーソナリティーを務めるDJのジョータローさん(40)は、驚きを隠さない。4月24日の夕方、近鉄奈良駅南側の旧市街地「ならまち」にある自宅近くで、6頭のシカの群れを見かけた。このときの様子を撮影した写真をツイッターに投稿すると、1万回以上リツイートされ、話題となった。

 奈良公園近くでは、シカが街中を歩いたり、草をはんだりしている姿を見かけるのは日常的だ。同会によると、毎年2~4月ごろは特に目撃情報が多く、市民の間では「閑散期で人が減るから」「冬場で草が減り、餌を探しに出ているのでは」-とささやかれる。

 今年も「シカが住宅街を歩いている」「シカが道路をふさいでいる」との連絡が相次いだ。新型コロナウイルスの影響で観光客が減り始めた時期と重なったため、インターネット上では「鹿せんべいをもらえずにおなかを空かしているのでは」との憶測も。同会は会員制交流サイト(SNS)で「鹿せんべいは主食ではなくおやつ。飢えているといったことはありません」と噂を打ち消していた。

 同会の職員は、道に迷ったシカを奈良公園へ帰したり、けがをしたシカを救助したりするために頻繁に出動する。出動回数は年々増加しており、平成30年度は約1400回、昨年度は約1900回。今年3月は400回と昨年同時期の2倍を数え、奈良公園から約2キロのJR奈良駅前で植え込みの草を食べる様子も目撃された。京都府との府県境での目撃情報もあるが、職員は「3キロ以上離れると、奈良公園以外に生息するシカの可能性が高い」と指摘する。

 街中でシカの目撃情報が増えている理由について、同会の担当者は「一概には言えないが、人が例年よりも少ないので、伸び伸びと出歩くようになったのではないか」と推察している。

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