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ミラノで隔離生活2カ月 「もう前向きになるしかない」時機が到来した (1/3ページ)

安西洋之
安西洋之

 どのような状況でもずっとネガティブに考えていると飽きがくるものだ。ぼくもミラノで隔離生活をおよそ2カ月続けてきて思うのは、この2~3週間、「いや応なしに前向きにならざるを得ない」というタイミングがやってきたと実感する。

 3月初旬の封鎖スタートの頃、ベランダでオペラのアリアを歌う姿が話題になった。ぼくも自宅で、そういう歌声を聴いた。この辛い時も明るく吹き飛ばそうとの気持ちの表れで、お互い励まし合うとの空気があった。

 ソーシャルメディア上でも同じだ。この隔離生活をいかに工夫して楽しんでいるかを他人に見せ、自らを鼓舞する雰囲気があった。

 言うまでもなく、それらはどれも底抜けにポジティブであったわけではない。自由に思いのままに動ける生活の方が良いに決まっている。

 一方、この静かになった街のなかで人との交流もあまりなく、何かに没頭する生活により充実感を得ている人もいる。それでもたまには外の空気を吸って散歩くらいは好きにしたいと思うだろう。だから隔離生活を満喫する人も自由に自宅の外に出られない環境自体を歓迎しているわけでもない。

 要は、強制的な隔離生活による静寂の日々にそれなりの価値を見いだすが、それは常に自主的な選択によって享受したいというのが願いだ。だが、普段の諸々の生活条件下では、その自由な選択が自分1人ではなかなか叶わないから、強制的であることを「密かに楽しみの弁解の一つ」にするわけである。

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