新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、感染の有無を調べるPCR検査の態勢拡充を図る動きが各自治体で本格化し始めた。韓国でいち早く導入され、車に乗ったまま検体を採取する「ドライブスルー方式」の実施も各地で進んでいる。
東京都内随一の繁華街・歌舞伎町を抱える新宿区。21日時点の感染者は259人で、2週間前の7日時点(80人)から3倍超に膨らんでいる。感染者の急増に保健所の検査業務が追い付かなくなっているほか、区内の医療機関の病床が逼迫(ひっぱく)し、自宅待機を強いられる患者も増え、医療崩壊の危機感が高まっていた。
新宿区では同区医師会と連携し、新型ウイルスの診療拠点になっている国立国際医療研究センターに専用の検査施設を設置。医師会や連携先の病院から医師、技師が派遣され、かかりつけ医の紹介を受けた感染疑いの患者の検査を行う。
感染が確認されたら、保健所が重症者を同センターや大学病院、中等症などの患者を中規模病院、軽症者を自宅・ホテル療養に振り分ける。同センターを窓口に空き病床を調整することで、保健所の業務を軽減。療養中の軽症者の健康管理は医師会などが担い、病状が悪化した場合には連携先の病院に搬送する。
墨田区は同区医師会と協力し、医療用陰圧テントを使った検査外来を開設。事前に電話による問診を済ませ、検体採取は1人5分程度で終わるため、1日最大50人の検査をすることができる。同様の仕組みは、千代田区や杉並区などでもみられる。
東京都医師会も、保健所を経由せずに地域のかかりつけ医の判断で検査を可能とする施設を月内にも10カ所程度開設する。1時間で4人程度の検体を採取できる見込み。「感染している人を拾い上げなければ感染の予防もできない」。尾崎治夫会長は今月17日の記者会見でこう訴えた。
検査態勢拡充の動きは全国に広がる。栃木県は駐車場などの仮設テント内に医師や看護師が常駐し、患者から検体を採取する「ウオークイン方式」を想定する。神奈川県でも横須賀市救急医療センターの駐車場に集合検査場を設けられる。
また、検体採取の迅速化に加え、患者が医療機関に立ち入らないため院内感染リスクを下げるメリットがあるとされるドライブスルー方式による検査は、大阪府が23日に大阪市内の公共施設の駐車場で開始。軽症者を中心に平日は15人程度、土日祝日は30人程度の検体採取を目指す。
今月15日から実施している奈良県によると、従来の専門外来の検査では診察のたびに防護具を交換し、換気や消毒も含めて1人1~2時間かかったが、ドライブスルー方式では手袋の交換だけで済み、1人10~20分で終えられるという。