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ゴールデン帯に異例の「再放送」や「総集編」 コロナ禍で収録中止相次ぎ

 新型コロナウイルスの感染拡大は収束の気配を見せない。スポーツ大会や各種イベントは軒並み中止や延期、ドラマ撮影も一時中断が相次ぎ、テレビ各局は放送スケジュールの大幅変更を余儀なくされている。この時期、ゴールデンプライム帯(午後7~11時)では通常みられない「再放送」や「総集編」を放送するなど異例の事態だ。(石井那納子)

 新年度が始まり、多くの視聴者が4月スタートの新番組を心待ちにする中での混乱だ。

 今月1日、NHKは新型コロナウイルスの感染拡大を理由に、大河ドラマ「麒麟(きりん)がくる」と連続テレビ小説「エール」の収録を当面見合わせると発表した。

 TBSも同日、ドラマの撮影スケジュールに影響が出ているとして、4月スタートのドラマ「半沢直樹」「私の家政夫ナギサさん」「MIU404」の放送開始を延期する考えを明らかにした。当初はそれぞれ、19日、14日、10日に始まる予定だった。

 この穴埋めとして、同局は過去に高視聴率を記録、また、“ドラマ好き”の評価の高かった作品の再放送を決定。5日午後9時から放送された日曜劇場「下町ロケット」特別総集編の第1週は、世帯平均の視聴率が9・0%を記録した。そのほか、話数未定で放送される医療ドラマ「コウノドリ」傑作選にも関心が集まる。

 日本テレビの「未満警察 ミッドナイトランナー」と「ハケンの品格」、フジテレビ「アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋」、テレビ朝日「BG~身辺警護人~」、テレビ東京「らせんの迷宮~DNA科学捜査~」なども放送開始延期が決定した。

 SNS上では「#再放送希望ドラマ」というハッシュタグを付けた投稿が目立ち、過去の名作の放送を期待する視聴者が多いことをうかがわせる。

 在京キー局でドラマ制作に携わってきた男性プロデューサーは、「ドラマならば年末年始の一挙再放送や、アンコール放送などで制作陣に実績が既にある。視聴率や広告主の反応も期待できる」と明かす。

 近年、働き方改革が加速していたことも「再放送」での対応を後押ししているようだ。

 現場スタッフの新作番組収録にかかる負担軽減策として、年末年始などにドラマの再放送を編成する局が増加していた。その経験が今回の騒動に生かせているという。また、新作番組を放送しないことで、「新型コロナウイルス対策にまじめに取り組まなければいけない、という危機感を視聴者と共有できるのではないか」とも話す。

 一方で、再放送が難しくなっているのが、やや時代をさかのぼったバラエティー番組だという。

 同志社女子大の影山貴彦教授(メディアエンターテインメント論)は、平成時代初期~中期のバラエティー番組について、「現代とはコンプライアンス(法令順守)の意識が違う。かなり際どい企画もあり、再放送で非難されることもあり得るのではないか」と指摘する。一方、「再放送で番組の新たな魅力、『テレビの面白さ』に気づくこともある」(影山教授)のも事実で、放送局の判断力が必要となりそうだ。

 新型コロナの影響は直近の番組にとどまらない。今夏に予定されていた東京五輪・パラリンピックは延期が決まり、NHKと民放は、競技の中継と大量の関連特番が全て空白となった。これをどのようなコンテンツで埋めるのか。

 影山教授は、「テレビが大きく変化する曲がり角に差し掛かっている。再放送が魅力的なコンテンツとなれるか、見せ方を考えるよい機会になる」と話している。

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