新型コロナウイルスの感染拡大に立ち向かう医療現場にとって、人工知能(AI)が強力な助っ人となりそうだ。大量のデータを読み込んで瞬時に結論を導いたり、将来を予測したりできる特性を生かし、診断を支援するAIの開発が進んでいる。
安倍晋三首相は緊急事態宣言を発令した7日の会見で、医療体制の逼迫(ひっぱく)を訴えた。欧米では病床や医療物資の不足が深刻化しており、日本でもこうした事態が懸念される。医療崩壊を防ぐには、限られた人手と資源を適切に配分する必要があり、患者の迅速な診断が求められる。
中国のAI企業インファービジョンは、胸部のコンピューター断層撮影(CT)画像の診断を支援するAIに新型肺炎の数千件の症例を学習させ、新型肺炎の疑いが強い患者を数秒で検知できるようにした。医師はこの情報を参考に、PCR検査の実施や隔離、治療といった対応を効率的に行える。武漢など中国の複数の医療施設のほか、ローマでも導入されている。
医療資源が枯渇すれば、現場は患者ごとに治療の優先順位を決めるトリアージを迫られる可能性がある。武漢の研究チームは感染者の血液サンプルから生存率を予測するAIを開発。感染者約400人の血液成分のデータを学習させたところ、90%以上の精度で高リスク患者を発見することができたという。感染爆発時に医療現場の意思決定を支援すると期待される。
新型コロナ禍によって、医療用AIの実用化が飛躍的に進む可能性がある。台湾のAI企業エイピアのミン・スン氏は「AIは予防から診断、治療まであらゆる段階に貢献できる。各国政府はAIの活用を後押しする必要がある」と指摘した。(松田麻希)