ラジオと同じたった3文字、1音違いのネーミング
ブランディング的には、とにかく「ラジコ」というネーミングが秀逸だと思います。ラジオと同じたった3文字でしかも1音だけしか違わないシンプルさ。誰が聞いても、ラジオに関係した何かだとわかる名前です。最近では各番組でも随所に「この放送はラジコでもお聞きいただけます」という案内が挿入されますが、音だけで聴いていても聴き紛れがありません。
実は、この単純過ぎるほどの簡潔さは当たり前のようで当たり前ではありません。作り手の思い入れが強すぎるのか、複雑だったり凝り過ぎたり。少なくとも初めて聞いて何のサービスかまったく分からないネーミングの世の中になんと多いことか。この点やはり音声だけで日頃から人に何らかを伝えてきたラジオ局ならではの知見と感心するところですが、あらためて耳で聞いたときの視点(?)の重要さを認識させられました。
アプリのデザインもシンプルの一言。今やこのスカイブルーとRのマークも随分浸透した気がします。凝りに凝ったデザインとはいえませんが、そのストレートさが、公式感や王道感につながっているとも言えるかと思います。
今や誰でもインターネットラジオ局を立ち上げることができる時代です。世界には音声コンテンツのネットサービスが無数に立ち上がっています。音声メディアという意味では、オーディオブックなども競合するでしょう。そんなメディア大競争時代に、伝統と実力を誇る名門メディアだからこそ提供できるプロ中のプロが出演し制作したコンテンツの力を新しいリスナーにも訴求できるか。インターネット上にラジコという一大メディアを創出できるか。
とかく独占的・絶対的立場できた分、ネット時代の苦境が伝えられもするレガシーメディアですが、このラジコのサービスを見る限りは、長年培ってきたプロの力と、ネットという合理的・効率的なプラットフォームが組み合わさったときの勝機大いにあり、と感じますがいかがでしょうか。
【ブランドウォッチング】は秋月涼佑さんが話題の商品の市場背景や開発意図について専門家の視点で解説する連載コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら