新型コロナウイルスの感染拡大防止のための全国一斉休校を受け、学習塾業界も歩調を合わせて授業を中止する動きが広がっている。代替措置として大手が授業のネット配信の準備を急ピッチで進める一方、保護者の強い要望を受け、通常授業を続けたり、授業時間を短縮したりする塾も。学習時間の確保は切実な問題だけに塾側も保護者側も対応に苦慮している。
全国の学習塾で組織する全国学習塾協会(東京)は2月28日、文部科学省の一斉休校通知を受け、会員の学習塾に対し、約2週間、対面授業を最大限控えることや、大人数での授業を延期することなどを要請。これを受け、授業を中止する学習塾が相次いでいる。
首都圏に展開する早稲田アカデミーでは授業中止期間を2日から8日までとした。ただ「国の対策がリアルタイムで変わるので週単位で対応を考える」(担当者)といい、今後も中止になる可能性が高い。小学3年生から中学3年生を対象に、通常は行っていない授業のネット配信を行う予定で、担当者は「9日から配信できるよう急いで撮影している。子供の安全第一だが、正直、バタバタしている」と疲労をにじませた。
当面の授業中止を発表した栄光ゼミナールもオンラインシステムで課題を送り、電話で定期的に指示や進捗(しんちょく)の確認を行う。生徒が通う学校によって課題の量が変わるため状況に合わせてアドバイスする。担当者は「まずは生徒の学びを止めないため、このような対応を始めた」と話した。
一方、小中高校生が通う都内のある学習塾では授業中止の形は取っていない。塾長(60)は「休む予定だったが、保護者からやってくれとの要望が強く、続けている」と明かした。
「基本的に休むか休まないかは任意。休んだ生徒は春休みに補習を行う予定」といい、実際休んでいる生徒は2~3割程度。生徒からは「家にいると息が詰まる」といった声が上がっているという。
小学3年生の双子(9)が通う塾の授業が中止になったという東京都江東区の会社員の女性(50)は「まだ3年生なので自分で教えることはできるが、学習の仕方は非常に悩ましい」と困惑する。
神奈川県小田原市の柏木塾では2月28日から3つの選択肢を用意。柏木善弘塾長(48)によると、(1)通常通り(2)90分授業を前半、後半に分け前半60分は授業。残りの30分は問題練習でそのまま塾で解くか、家に持ち帰るかを選択(3)普段は開講していない昼に10分間家庭学習の相談を受ける-の3択で、大半は(1)を選んでいるが、3月3日になって(3)を選択する児童生徒も出てきたという。「世の中の状況を見て感染への不安を感じる保護者も出ているようだ」と話した。