好きなことに熱中していると、寝食を忘れて没頭してしまうこともあるものです。眠らずに済むのであればそうしたいと思う人もいるでしょう。しかし短すぎる睡眠時間が続くと心身の不調をきたすことが数々の研究から示されており、どれほどやりたいことがあっても7時間前後はしっかり眠ることが大切だと考えられています。
子供については、寝れば寝るほど良いとも言えるかもしれません。小学生なら10時間前後、中高生でも9時間前後の睡眠時間は必要とされていて、その基準を満たしている子供のほうが成績も良く情緒も安定しているようです。
私のクリニックの外来を訪れる大人の患者さんからよく聞くのは、眠れないという訴えです。眠れないというのはとてもつらいことですが、従来の睡眠薬を安易に使用するのはおすすめできません。生活のリズムや睡眠のための環境を整えることで不眠が解消される場合もあります。
ただ大人については、睡眠時間が長すぎることにも少し注意が必要なようです。
睡眠時間や昼寝の長さ、睡眠の質と脳卒中の発症の関係を調べた研究結果が今年1月に米国の医学雑誌に報告されました。これは平均年齢62歳の中国人約3万人を対象としたものです。これによると睡眠時間が7~8時間の人に比べ、9時間以上の人は脳卒中が23%増えています。また昼寝が30分以下の人に比べ、90分を超える人はやはり脳卒中が25%増えていました。睡眠の質に関しては、良い人に比べ悪い人では脳卒中が29%増えていました。
病気や体調不良があれば、長い時間床に就く必要が出てくることになります。また過度の飲酒や睡眠時無呼吸などで睡眠の質が下がることは、睡眠時間や昼寝が長くなることに繋(つな)がります。病気や睡眠の質の低下が血圧や血糖値、体重などに影響を与え、これらが脳卒中の発症を増やしてしまうことなどが考えられます。たくさん寝ているから健康なはずだと過信せず、何か体に不調や不具合がないか見直してみると良いでしょう。(しもじま内科クリニック院長下島和弥)