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新型肺炎感染者の行動歴など情報公開が課題 統一基準を求める声も

 新型コロナウイルスの感染が拡大する中、自治体では混乱や風評被害の恐れから感染者の詳しい行動歴を公表しないケースも多い。しかし、専門家には「プライバシーへの配慮は必要だが、もっと積極的に情報開示すべきだ」との声もあり、詳しい情報を発信するケースも出ている。自治体から、政府に統一方針を示すよう求める声も高まる。

 タクシーの運転手らの感染が明らかになった東京都。今月15日、新たに感染が確認された40代の男性会社員が、発症後に東海道新幹線で愛知県に出張していたと明らかにした。13日に感染が判明した千葉県の男性会社員は、発熱後も東京まで電車通勤していたことが判明している。

 しかし、感染者の行動歴がすべて明らかにされているわけではない。都は「(根拠のない)恐怖を防ぐためにも経緯をできるだけ明らかにすべきだ」(知事)との立場だが、発表では「電車」「タクシー」で移動などの表記にとどめている。千葉県も通勤電車の路線を公表しなかった。

 一方、名古屋市は15日、市内在住の60代女性の感染確認を発表したが、すでに感染が確認されていた夫とともに米ハワイから帰国していたことなどを明らかに。ほかの自治体も含め、判断基準はまちまちだ。

 全国知事会は5日、感染防止の観点から、行動歴などの公表について統一的な対応方針を示すよう政府・与党に求めたが、厚生労働省は基準を明確にしないまま。感染者の年代や性別は明らかにするものの「足取り」の詳細の公表には、積極的とはいえない状況だ。

 奈良県のバス運転手の感染が判明した際には、立ち寄り先も積極的には明らかにせず、感染した香港人の男性が参加した鹿児島のバスツアーについても、運行会社の説明より情報量は少なかった。

 新潟大の鈴木正朝教授(情報法)は「そもそも『足取り』の調査にも現時点で法的な根拠があいまい。自治体ごとの条例に基づき、バラバラに情報を公表するという枠組みに問題がある。国民の不安を解消するには正しい情報の開示が不可欠であり、これを機に、政府として統一的なルールを定める必要がある」と指摘している。

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