ヘルスケア

新型肺炎、国が受診目安提示へ 専門家「重軽症者の試算必要」

 肺炎を引き起こす新型コロナウイルスをめぐり、国内で感染経路が明確でない感染者が相次ぐ中、厚生労働省は15日、感染が疑われる症状のある人に対し、医療機関を受診する判断の目安を提示することを明らかにした。重症者の悪化を防ぐ医療態勢の構築が急がれており、専門家は「医療機関の受け入れ準備のため、重症者や軽症者の数を試算し、周知することも必要になる」と指摘する。

 「これまでと状況が異なる」。15日に緊急会見した加藤勝信厚生労働相はここ数日で感染経路が判明していないケースが複数あるとして、国内での感染拡大に対する認識を改めた。16日に開かれる専門家会議では、日常生活の中で広がる「市中感染」が起きているとの判断が出るかがカギになるとみられる。

 政府チャーター機とクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」を除く、国内の感染者は11都道府県で計39人。13日以降に一気に計23人増えたが、加藤氏は「5つぐらい」が感染経路不明とし、専門家会議では「医学的、疫学的にどう評価するのか、専門家の判断をいただきたい」と話した。

 東北大の押谷仁教授(ウイルス学)も「感染連鎖がようやく見えてきた。国内にも多数の感染者がいるだろう」と分析。昨年12月に既に国内にもウイルスが持ち込まれていたケースを懸念し「数万人規模になっていてもおかしくないが、実態がつかめていない。重症者が突然増える可能性がある」と指摘する。

 感染初期なら無症状や軽症で自覚症状がない人も多いとされる。実際、今月13日に死亡した神奈川県の80代女性は1月22日から体調不良を訴え、その後呼吸状態を悪化させていったが、厚労省に感染者として報告が上がってきたのは、死後にウイルス検査の結果が陽性となってからだった。

 クルーズ船の感染者285人は原則、医療機関に入院。当初は東京、神奈川で収まっていたが、14日には福島、愛知が加わり、1都11県に広がった。重症者は60~80代の12人(うち1人は陰性)に上り、集中治療室での治療や気管内挿管などの呼吸管理を受けているが、大半は軽症ということになる。

 感染症患者に特化した病床は全国約370の指定医療機関に計約1800床あるが、押谷氏は「今はクルーズ船の軽症者も入っているが、これからは全て重症者に充てないといけない。一般病棟でも集中治療のできる病床をいかに確保できるかだ」と訴える。

 厚労省の要請で既に47都道府県の医療機関663カ所に専門外来が設置されているが、平成21年に流行した新型インフルエンザ当時と同程度の800カ所への拡充を目指す。重症化しやすい高齢者や持病のある人を想定し、体温などの受診基準も示すという。

 重症者は入院、軽症者は外来か自宅療養という医療のすみ分けを求める声も少なくない。東北医科薬科大の賀来満夫特任教授(感染症学)は、都市部と地方で受け入れ能力に差があると指摘。「混乱を避けるため、国にはこれまでの症例から重症・軽症者の数を予測するなどし、自治体に伝えることも求められる」と話している。

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