高齢ドライバーによる事故が社会問題となっているが、地方では車がないと、容易に「買い物難民」になってしまう。解決策として期待されるのが、自治体による「買い物ツアー」。独居の高齢者らが話をしながら、ショッピングを楽しむツアーは、認知症予防にもなりそう。山梨県道志村の買い物ツアーに同行した。
横浜市の水源となっている道志川と併走する国道413号に沿って東西28キロに細長く広がる道志村。スーパーや大型店はないが、田舎暮らしにあこがれて移住する人も多い。村民の多くが持ち家で、最後まで自宅で暮らしたいと望む人がほとんどだ。しかし、人口約1600人の村の高齢化率は36%超。移動の生命線である路線バスの便も削減され、暮らしは年々厳しくなっている。
■村民主導のアイディア
そんな村の課題と解決策を話し合おうと平成21年、若い母親から高齢者までさまざまな立場の村民と村職員が集まった。そのときに出たアイデアのひとつが、独居や免許のない高齢者らを対象にした「買い物ツアー」だ。
そのころを知る村住民健康課の保健師、宮下美恵子さんは「村民が村にお願いするのでなく、自分たちでできることは取り組もうという姿勢で意見を出してくれた」と振り返る。
村が提供するのは、同行する職員とマイクロバス、荷物運搬用の公用車、運転手。参加費は無料で、村は運転手の日当と参加者の保険料、運搬協力者の時給を負担する。ツアーは24年度から始まり、月1回。昨年度は1回平均16・8人(のべ202人)が参加した。
12月のツアーでは、午前9時前に村の施設を出発したマイクロバスは国道沿いの住宅前やバス停付近で次々に住民を拾った。参加者は15人で全員が顔見知り。行き先は前月のツアーの帰り道で決めてあり、午前中はホームセンター、回転ずし店での昼食をはさみ、午後は食料品と衣料品を扱うスーパーと100円ショップ、ドラッグストアを回った。