終活の経済学

墓じまい(3)遺骨の納め先 「管理できなくなる日」見越し

 「墓じまい」は「遺骨の放棄」ではない。だから元の墓が更地になったとしても、遺骨を新たに納める場所が必要となる。遺骨の引っ越し先について考えてみよう。

 ◆永代供養の選択肢も

 考えられる主な引っ越し先を“墓の形”に分けてみていくと、「新しく建てた一般墓」「納骨堂」「合葬墓」「樹木葬」「自宅で供養」「散骨」といった選択肢がある(※「自宅で供養」「散骨」は正確には「墓」ではない)。

 また、“墓の管理形態”に分けてみていくと、「永代供養墓」であるか、そうでないかという選択肢がある。永代供養墓とは、「子々孫々での承継を前提とはしておらず、寺などが供養をする墓」のことだ。

 遺骨を納めた直後から永代供養をしてもらうケースもあれば、当初は個別のスペースに遺骨を納め、二十三回忌、三十三回忌、あるいは墓を管理する子孫がいなくなったときなどを節目に、他人の遺骨と合葬して永代供養してもらうケースもある。ちょっとややこしいが、永代供養墓の“形”は、一般墓、納骨堂、合葬墓、樹木葬のどれにでもあり得る。

 お墓の検索サイト「いいお墓」を運営する鎌倉新書が実施した「お墓の消費者全国実態調査」(2018年)によると、今ある墓を改葬(墓じまい)するために、新たに墓を購入した人は、墓全体の購入者の14%だった。

 その14%の人に、どのような管理形態の墓を購入したかを聞いたところ、60%の人が「一般墓から永代供養墓に改葬」をしていた。

 墓じまいの要因が、(1)「少子化」「子供なし世帯の増加」といった人口構造上の問題や、(2)「子供に負担をかけたくない」という価値観の問題であることは、この企画「墓じまい」の冒頭で紹介した。アンケート結果をみると、供養する人がいなくなることを見越して、その備えのために墓じまいをしている人が多いことが分かる。

 またアンケートでは、「改葬前も改葬後も一般墓」という人が33%いたほか、「永代供養墓から一般墓に改葬」した人も8%いた。墓じまいが、「供養や遺骨の放棄」ではないことが分かるデータだ。

 ◆費用と長所・短所

 以下に、改葬先となる墓の形ごとの特徴や費用の目安、メリット・デメリットをまとめた。墓ではないが、「散骨」も並べて比較してみた。

 費用が最もかかるのは、土地と墓石、工事代が必要になる一般墓だ。一般墓でも最近は、一人っ子同士あるいは長男長女が結婚した場合に、1つの墓に両家の遺骨を納められる「両家墓」や、友人同士で入れる墓など細分化が起きている。それらは、承継者がいなくなることに備えての墓じまいの引っ越し先としても、選択の余地がありそうだ。

 墓の管理が一切不要という点では、合葬墓や散骨が選ばれることになる。しかし、(1)遺骨が他人と一緒になることへの抵抗感、(2)あとから遺骨を取り戻すことができない、(3)供養の対象がなくなる、といったデメリットがあり、認知度の高まりはある一方で、実際には広がりはみせていないのが現実だ。

 それぞれ一長一短あるので、墓じまいを考えるときにじっくりと参考にしてほしい。(『終活読本ソナエ』2019年秋号から、随時掲載)

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【用語解説】永代供養墓

 子々孫々での承継を前提とせず、主として寺が子孫に代わって供養する形式の墓。子供の有無にかかわらず、関心をもつ人が増えており、年々増加している。本人の生前申し込みを前提としている寺も多い。決まった形はなく、「伝統的な一般墓」「納骨堂」にも、永代供養墓とそうでないものがある。最初は個別の空間に納骨され、その後、三十三回忌など一定の期間が過ぎたり、承継者が途絶えて管理料が払われなくなったりしたら合葬される形態をとる墓も多い。どのような形の墓であれ、永代供養墓であれば最終的には「合葬墓(合祀墓)」に納められることがほとんど。最初から、ほかの人の遺骨と合葬墓に入るようになっているところも多い。(石材店、霊園によって定義が異なることがあります)

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