高論卓説

「サウンドを設計」する時代 健康むしばむノイズに要注意 (1/2ページ)

 大阪で「悪趣味」との批判を受け大阪のメトロが駅のデザインを変更した。有識者を含む約2万人からの署名が提出されていた。毎日の通勤通学でその光景を目にする人たちにとっては、視覚の暴力以外の何物でもない。そうでなくとも、現在の消費者は1日に約5000もの広告にさらされているという。視覚の暴力には気付きやすいが、実はもっと深刻な問題がある。それは、音(サウンド)である。心地よい音楽ばかりが流れている世の中であればよいが、音楽の好みも違うであろうし、さまざまなノイズが存在するのが現実である。(芝蘭友)

 筆者も先日、講演会を聴講しに出かけてノイズを経験した。横の席に座った女性のパソコンのキーボードを打つ音である。長い爪の先端でキーボードを操作し、パチパチとなる不快な高速音。壇上にいる登壇者の話に集中できなくて苦労した。電車内であれば耳を塞いで好きな音楽でも聴けばいいが、話を聞きに来ているのだから耳は塞げない。偶然の一回きりなので我慢はできるが、これが職場の同僚で隣の席にいるとなると心身が間違いなくやられる。デザインなど視覚の暴力は見えるが、サウンドによる音の暴力は見えにくい。そして健康にとてつもない悪影響を与えている。

 WHO(世界保健機関)の調べでは、バックグラウンドノイズによる身体不調や休職、それに伴う医療費、生産性の低下はイギリスでは約4兆円の損失に上るとされている。頭痛、自律神経の乱れ、不眠、血圧の乱れによる体調不良などの原因が、身の回りにある「音」が原因だということに気付いている人は少ないのではないだろうか。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus