山口大は2013年度から、1年生全員に必修として知的財産科目を課している。デジタル化が進み、ソフトやコンテンツの複製が容易になった時代に、知的財産権に関する最低限の知識を身に付けてもらうのが狙いだ。文系理系にかかわらず、全学部生に課している総合大学は全国でも山口大だけという。
知的財産を扱う部署に優秀な人材を配置する大企業は多いが、地方では資質のある学生を確保できない中小企業もあり、大学側には企業からの引き合いが増えているという。
著作権・特許・商標…
必修科目の名称は「科学技術と社会」。主に著作権、特許、意匠、商標などの各法律が定める権利を扱う。
農学部・共同獣医学部生を対象にした5月の講義では、CDの私的複製と違法ダウンロードの問題を足掛かりにして、研究に伴う研究者倫理まで展開していった。授業の終わりに教員は「皆さんは研究者として知財をつくり出す立場でもある。危うそうだからと著作権から遠ざからず、活用できる人になってほしい」と訴えた。
鹿児島県出身の女子学生は「内容が濃いので復習には毎回1時間かかるが、文章の引用や研究ノートの記録の仕方など学ぶべきことは多い」と話す。山口大が以前から知的財産の教育に力を入れていると知り、大学選びの参考にもしたという。