体内の異物を排除する免疫の力を利用し、がんを攻撃する新たな薬「免疫チェックポイント阻害薬」に、一度表れた効果が途中でなくなる「耐性」という現象が報告され始めた。
がん研究会がん化学療法センター(東京)の片山量平部長らがこの耐性の仕組みの一部を解明し、薬を変えれば再び治療が続けられる可能性を示した。
免疫細胞は、体内でがんが発生すると異物として攻撃する。だが、がん細胞の中には「PDL1」というタンパク質の働きで免疫細胞の攻撃にブレーキをかけてしまうものがあり、がんの増殖につながっている。今回研究対象にした薬はPDL1に結合して攻撃が止まらないようにするもので、皮膚や肺のがんの治療に使われている。
片山さんらは今回、薬が効かなくなった17人の遺伝子を解析し、4人(24%)でPDL1ががん細胞の外に分泌される変化が起きたことを発見した。がんを移植したマウスで実験すると、たった1%のがん細胞に変化が起きただけで薬が効かなくなることも分かった。
薬を投与しても細胞外に分泌されたPDL1に結合してしまい、本来の目的であるがん細胞にたどり着けなくなった可能性がある。
それなら、PDL1とは別のタンパク質を標的にした免疫チェックポイント阻害薬に切り替えれば、がんへの攻撃が再開できるはずだ。マウスの実験では、耐性になったがんを、別の薬を使うことで小さくすることに成功した。
耐性の仕組みは他にも数多くあるとみられる。片山さんは「患者さんから提供された組織を活用し、耐性を確実に克服する手段を研究していきたい」と話している。