【ビジネストラブル撃退道】なぜか複数の案を出させようとする発注主は多い。これは本当に無駄である。私は広告代理店にいた時期があるが、大抵の場合「A案、B案、C案」という言い方か、「松竹梅」という言い方をし、どんな企画であろうが3つの案を提出する慣例があった。これらの分類は、金額の多寡ないしは「攻める企画・保守的な企画」に応じたものである。(中川淳一郎)
この場合、大抵は「B案」か「竹」という無難なものが採用されるものである。本当は「A案」か「松」をやった方がいいと提案者側は分かっている。ないしは、ドーンと手を抜く&カネをケチって「C案」か「梅」がいい。だが、クライアント側の社内で検討するにあたり、上にあげていくにつれ、段々と無難なものが支持されるようになり、結果的には「B案の中」「竹の中」が採用されることとなる。
提案する側は、「これしかない!」という考えで渾身の1案を作るのだが、クライアントと直で接する営業が「1つだけだと本気だと思われないんだよね」や「やっぱり選択肢を用意する方が誠意がある対応だと思うよ」などと言い、結局力の入らない2つのアイディアを追加するのである。
ビジネスなんてものは結論はないのだ。結局何人ものハンコを押してもらって決済をすることは、「より無難な方向に持っていく」ことでしかない。ビジネスというものは、当事者性が高い現場の人間以外、実際のところそれほどの危機感は持っていない。もちろん、統括する部門の業績が悪かったら1億円超の役員報酬がパーになってしまうかもしれないお偉いさんも真剣かもしれないが、たかだか広告代理店やシステムベンダーから来た「松竹梅」のプランで何を選ぶかなんてことまで気が回るわけがない。