西日本豪雨では、広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶ「しまなみ海道」サイクリングロードも一時、局所的に法面崩壊の被害を受けたが、すでに回復。沿道地域の断水も、ごく一部の地域を除いて解消した。しかし、サイクリング客の数は元に戻っておらず、風評被害も懸念される。市は「サイクリング客が地元の負担になることはありません」と積極的な利用を呼びかけている。
しまなみ海道のサイクリングは近年、国内外で人気が急上昇し、昨年、尾道市を訪れたサイクリング客は前年比10.6%増の20万4304人と5年連続で過去最多を更新していた。
しかし6日に発生した西日本豪雨では、車道の路側に推奨ルートを示す「ブルーライン」沿いの一部が被害を受けた。尾道市によると、岩子(いわし)島に渡る橋の下で法面が崩落。通行を妨げたが、13日ごろには撤去作業が完了し、片側通行が可能に。他に大きな被害はなく、すでにブルーラインは全線通行できる状態に回復している。
豪雨直後は断水でトイレが使えなかったり、水が飲めなかったりする不便な状態が続いたが、すでに沿道地域の断水はほぼ解消。尾道市によると、市内全域では遅くとも21日に断水の復旧が完了する見通し。
サイクリング客の利用が多い沿道のコンビニエンスストアも流通が回復した。
しかし、訪れるサイクリング客の数は元通りに戻っていない。
一般社団法人「しまなみジャパン」によると、今月のレンタサイクル利用数は12日現在で440台と、前年同期(2300台)と比べ大きく落ち込んでいる。
広島県内では依然、行方不明者の捜索や復旧作業が続いている地域があり、公共交通機関が完全に回復していないことも「サイクリングどころではない」と敬遠する傾向に拍車をかけているとみられる。
尾道市にもサイクリングが可能か問い合わせの電話も寄せられているが、担当者は「『大丈夫なので普段通りお越しください』と説明している」と風評被害の払拭に努めている。
ただ、コースには豪雨災害の影響でわずかに粉じんなども残るため、走行中のスリップには注意が必要。レンタサイクルの施設では「土砂堆積 スリップ注意!(特に下り坂)」と掲示し、注意を促している。
尾道市の担当者は「サイクリング客が訪れて地域活性化することが何よりも地元への励ましになる」と利用を呼びかけている。