平成30年度予算案についての衆院予算委員会で、厚労省のデータ問題をめぐる立憲民主党の高井崇志氏の質問で陳謝する加藤勝信厚労相=19日午後、国会・衆院第1委員室(斎藤良雄撮影)【拡大】
働いた時間に関係なく賃金が支払われる「裁量労働制」をめぐり、厚生労働省は19日、一般労働者と裁量制で働く人の労働時間を異なる条件で比較し、裁量労働制の方が短いとする不適切なデータを作成していたと公表した。今国会に提出予定の「働き方改革関連法案」には裁量労働制の対象拡大が盛り込まれており、データは裁量労働制の効果を示す根拠として安倍晋三首相の答弁にも引用(後に撤回)された。法案審議に影響が出るのは必至だ。
厚労省によると、データの根拠になったのは「平成25年度労働時間等総合実態調査」。厚労省はこれを元に、裁量労働制の労働時間(1日平均9時間16分)は一般労働者(同9時間37分)より短いとする比較データを作成した。
しかし、調査は一般労働者に「1カ月で最も長く働いた日の残業時間」を尋ねたのに対し、裁量制では1日の平均的な労働時間を聞いており、比較には不適切だった。さらに、一般労働者の残業時間に法定労働時間の8時間を加えたものを「労働時間」としていたほか、1日の残業が「45時間」などと誤って記された例が少なくとも3件あったのに、それらも加えて平均を算出していた。
比較データは27年3月の民主党(当時)の厚生労働部門会議に初めて示され、その後も塩崎恭久前厚労相や今年1月の安倍首相の国会答弁で使われた。野党から指摘を受け、厚労省は今月7日、加藤勝信厚労相に「調査の方法や定義が不明確」と報告したという。