スクール通学や書籍購入など、自身の能力を向上させるための「自己啓発」に関する市場が、2016年現在の推計で9049億円となることが、共同通信が三菱UFJリサーチ&コンサルティングに依頼した調査で分かった。1989年推計と比較すると、約30年間で約3倍に拡大。宝くじの年間売り上げと同程度の市場規模で、国民1人当たりに換算すると、年間約7000円を支出している計算になる。
終身雇用制の下では企業が従業員の能力開発を担ってきたが、バブル崩壊後の景気低迷などを経て、個人が自発的に自己啓発に取り組む形態へと移行が進んだ。同社は「人生100年時代」などを見据え、市場はさらに拡大するとみている。
自己啓発市場を、ビジネスに関わるスキルやマインドの習得を目指すものと定義し推計した。書籍の売り上げや語学スクール、資格取得スクールといった9項目を分析。ゴルフレッスンやカルチャースクール、学習塾などは対象外とし、ビジネスに直結しないセミナーなども除いた。
項目別に2016年の市場規模を見ると、英会話などの「語学スクール」が2860億円、公認会計士や弁護士などの「資格取得スクール」が2370億円で、計5230億円。1989年時点は計800億~1100億円程度で、約5倍に増加。市場全体を押し上げる格好になっている。
専門職大学院が制度化された「社会人大学院」(1452億円)や、インターネットの普及に伴う「Eラーニング」(100億円)のように、1989年には極めて小さかった市場も時代の変化に合わせて拡大した。
一方で「書籍・雑誌」は出版市場の縮小を受け、1989年の1457億円を下回る965億円。ただ、今回の調査はビジネスとは直接関係がなかったり、生き方を説いたりするような書籍は含まれていない。いわゆる自己啓発本まで範囲を広げると、「書籍・雑誌」の市場規模もさらに膨らむとみられる。
同社は「ビジネスマンはこの間、大企業の経営破綻やリストラを目の当たりにしてきた。自己啓発への投資は今後も増えるだろう」と分析している。