「人工知能」が人間を超える日 2045年くらいに「シンギュラリティ」が訪れる (2/2ページ)

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 記憶容量も、処理スピードも人間をはるかに上回る人工知能にとっては、本来、例えて言えば将棋や囲碁の対局を同時に何千局、何百万局も行うというような設定のほうが、その力をより発揮できると言えるだろう。

 成り立ちが違うから、比較しても意味がない

 たとえば、近い将来、自動運転車が街にあふれるようになったとき、通行量や渋滞状況を把握して、瞬時に、全体の流れが最適になるように調整するのは人工知能にふさわしい課題だろう。一人ひとりの人間の脳には手に負えないし、理解もできないけれども、そのような課題を人工知能にやらせることは、現実のこととなるだろう。

 人工知能の生みの親、アラン・チューリングが提唱した、人間と同じように会話ができるかどうかという「チューリング・テスト」も、今となってはあまりにも人間の都合に合わせた課題だと言えるのかもしれない。

 人工知能にとって本来取り組むべき課題は、たとえば、何千人という人と同時に会話して、その言葉の統計的傾向から、市場の変化を予想したり、流行を把握したり、社会の問題を察知するといったことなのかもしれない。そのような課題は、人間の脳にとってはほとんど想像すらできないことだけれども、人工知能にとっては近い将来現実的なものになるだろう。

 人工知能と人間の脳は成り立ちが違うから、比較しても意味がない。人間の脳と全く違う能力を持ち始めているという点から見れば、シンギュラリティはもう起こっている。

 人工知能は人間とは違うと考えれば、かえって安心して人間らしく生きることを模索できる。人工知能を人間と比べる時代は、そろそろ終わりなのである。

 (脳科学者 茂木 健一郎 写真=AFLO)(PRESIDENT Online)