「部下が全然育たない」「厳しく言うと、反発されそう」。そんな悩みに「敏腕マネジャー」はどのように対応しているのか。今回3社のマネジャーに、実際に使っている“キメゼリフ”を聞きました。解説は、リーダーシップ開発の専門家、東京大学の中原淳准教授です--。
管理職は嫌われるのも仕事のうち
「これまで1000人以上のマネジャーに会いましたが、『部下が育って育ってしょうがない』なんて人には会ったことがありません」。そう笑うのは、東京大学准教授の中原淳さん。中原さんは近著『フィードバック入門』で、「耳の痛いことを伝えて、部下と職場を立て直す技術」について解説しています。
(左)日本ハウズイング 第一事業部 課長 森上小友美さん(中)JTBコーポレートセールス 営業第三課長 野村健児さん(右)モスフードサービス CSR推進室 社会環境グループ グループリーダー 松田由美子さん
中原さんは「部下に苦言を呈するのは確かに気が重いですが、管理職は嫌われるのも仕事のうち、と腹をくくりましょう」と助言します。
「私はこう思う、と自分を主語にして、耳の痛いことをきちんと伝えるべきです。叱った直後に『でも、人間的には好きだけどね』なんて余計なフォローを入れるのもよくない。相手によっては、せっかくのフィードバックが台無しになります」
マネジャーの語源、Manageは「やりくりする」という意味。マネジャーは、物事がひとつでも前に進むためのやりくりを考えればいい。完璧な方法などありえないのだ。
「つまり、マネジャーがなすべき第一の仕事は『職場の目標達成』。これに尽きます。部下の反応を気にする前に、目指すべきビジョンとゴールを明確にし、自分の時間とエネルギーをどこに投入するのが最も有効なのか、シビアに考えましょう」
目標達成に向けて、部下のモチベーションを上げるのもマネジャーの重要な仕事だが、褒めてもいまひとつ反応が薄い部下にはどう接すればよいのか。
「最近は、できて当たり前、ミスがなくて当たり前の文化で育ってきて、自己評価が低い若手社員が多いんです。褒めるなら、大げさなくらいがちょうどいいです。それから、本音を言える安全な場所を用意して、部下の話を最後まで聞き切ること。実はこれが一番モチベーションが上がる方法かもしれません」