このA君は、一般入試は受けていない。それも受験にかける経費を安く抑えるためだ。一般入試の場合、受験料は1校あたり約3万5000円。当然、併願するので4校を受ければ14万円にもなる。一方、AOや推薦入試では学力試験を課していないケースもあり、一部の難関大学を除けば、まず間違いなく志望校に合格できる。無駄な経費はかからない。
少子化で大学には入りやすくなっている。それでも確実に合格できるAOや推薦入試が人気になっている。AOや推薦入試での進学者が多いという首都圏のある私立高校の校長は「経済的な理由から、推薦を選ぶ生徒が多い。進学校に変えていきたいのですが、これでは難しいでしょう」と嘆く。
進学校では、多くが一般入試で大学合格を目指す。1人で何校も合格を勝ち取れば、それが実績になり、さらに優秀な生徒が集まるようになる。それがAOや推薦入試の1人1校受験では合格できそうなところを選ぶため、「チャレンジ受験」はなくなり、合格実績が伸びていくことはない。
つまり経済的な理由から、高校の二極化も進みつつあるといえる。
「自力進学」して親に仕送りする学生も
経済的な理由から、奨学金が学費以外に使われてしまうケースもあるようだ。東京の中堅レベルの大学で奨学金を担当している職員がこう話す。
「まじめに大学に来ている学生なのですが、毎月かなりのアルバイトをしているようなのです。成績優秀なので、授業料は全額免除されています。さらに各種の奨学金をもらい、貸与奨学金も目いっぱい借りている。ところが、派手に遊んでいる様子もなく服装も地味。『そんなにお金をもらって、どうするのか』と聞いたことがあります。あまり話したがらなかったのですが、どうやら両親に仕送りをしているようなのです。両親は2人とも働いておらず、生活費を子供の奨学金に頼っている。体調に問題はないらしく、なぜ働かないのかはわかりません。詳しい経緯は不明ですが、そうだとしたら本当にかわいそうです」