この社会実験は10年をもって終了し、現在では同実験に参画した株式会社蔦井が事業主体となり、栄ミナミ地区に範囲を絞っての「でらチャリ」というシェアサイクルが展開されている。
これが以前の「名チャリ」のような広範囲に拠点を設け、スペース24のような民間事業者が独自に展開するレンタサイクル事業も取り込んでさらに規模を拡大すれば、名古屋都心部の移動手段として有望な存在たりうるようにも思える。ただし、そうなると自転車での移動が便利になりすぎて、民業圧迫の側面が出てくることもまた確かだ。
先にも述べたように、シェアサイクルにはバスやタクシーのライバルたりうる潜在力がある。シェアサイクルが爆発的に普及してバスやタクシー会社の倒産が相次ぐようでは、都市政策としては本末転倒、落第のそしりを免れないだろう。
シェアエコノミーの双璧である米ウーバーや民泊仲介最大手の米エアビーアンドビーの場合と同じく、誠実に法令を順守してきた既存事業者との住み分けにも目をくばることが欠かせないのだ。そうした課題があることは確かだが、バスやタクシーの隙間を埋める移動手段のニーズが高いこともまた確かだ。眼前のハードルを一つ一つクリアして、シェアサイクルがこの国に根付いていくことに期待したい。(待兼音二郎/5時から作家塾(R))
《5時から作家塾(R)》 1999年1月、著者デビュー志願者を支援することを目的に、書籍プロデューサー、ライター、ISEZE_BOOKへの書評寄稿者などから成るグループとして発足。その後、現在の代表である吉田克己の独立・起業に伴い、2002年4月にNPO法人化。現在は、Webサイトのコーナー企画、コンテンツ提供、原稿執筆など、編集ディレクター&ライター集団として活動中。