BRUTUSを愛読、こだわりの中古車… オシャレのつもりが残念な目で見られている「痛い中年」たち (1/2ページ)

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常見陽平のビバ!中年

 中年男女、必読の書が現れた。『デザイナー 渋井直人の休日』(宝島社)だ。作者の渋谷直角は、この9月に公開された妻夫木聡、水原希子が出演する映画『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』の原作者でもある。『カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生』(扶桑社)のヒットも記憶に新しい。痛い文化系男女、ワナビーを描かせたら右に出るものがいないレベルのコラムニストだ。

 本作も、腐った魂を蹴り上げられるレベルの傑作だった。いや、硬い頭に釘を打ち込まれたような感覚だとも言っていい。渋谷直角を愛してやまない私達中年夫婦は二人で涙したレベルだ。もうすぐ生後3カ月になる娘にも読み聞かせをしてしまうばかりの面白さだ。

「これ、自分のこと?」 他人事ではない“背伸びオシャレ中年”

 あまりに興奮して内容について書くのを忘れてしまった。この本は、主人公の50代独身デザイナー渋井直人の日常を描いたコメディ漫画である。デザイン関係者のあるある話、中年の悲哀、背伸びしたオシャレ親父の日常が描かれる。SNSでつながった女性とのデートが大失敗する、部屋に若い女友達がやってくるのでアクアパッツァなど普通の男性が作らないようなカフェ飯的オシャレ料理を作ろうとしたら突然キャンセルの連絡などなど、クスリと笑えるような話がいっぱい。どれも、50代にもなって世渡りが下手であること、お人好しのようで頑固者であること、何より背伸びしたオシャレというのが笑える点だ。

 しかし、笑ってもいられない。妻は育児の合間にこの本を読み、笑い転げたあと、こう言った。「これ、あなたのことをいじってる本じゃないの?」と。そう、私はここで出てくるような、背伸びオシャレ中年なのだ。『BRUTUS』『POPEYE』『Pen』あたりを愛読し、デパ地下や成城石井、北野エースあたりで買い物をしてカフェ飯っぽい料理をつくり、ちょっと変わったコダワリの服をキメる中年なのだ。渋井直人との違いは、結婚して子供もいることくらいではないか。

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