トイレにさりげなく本を置く
たとえるなら、家は菌を培養するときに使うシャーレです。菌を培養するとき、シャーレの色や形は関係ありません。大切なのは、菌にどのような養分を与えるか。子育ても同じで、家の広さや間取りという容器の形にこだわるより、養分となる場面をどのようにつくるのかということのほうが、ずっと大事なのです。
場面には、さまざまなパターンがあります。たとえば、算数は抽象的な思考を要しますから、1人で集中できる場面をつくってやったほうがいいでしょう。一方、社会や理科、国語は、親子のミューチュアル(相互)コミュニケーションで頭を刺激していく場面をつくったほうがいい。もちろん親子のミューチュアルコミュニケーションも一様ではありません。たとえばトイレに棚を作って読んでほしい本をさりげなく置いておくなど、直接介在せずに情報交換するやり方もあります。
つまり、ある間取りにすれば頭が良くなるという単純な解が存在しないように、場面についても絶対的な答えはないのです。重曹が泡立つ様子を見て化学に興味を持つ子供もいれば、アブラムシは苦手だという子供もいる。親はそういった反応を観察しながら環境をつくっていく。
建築家に具体的なイメージを伝える
もう1つ、子供の興味は成長とともに変わることも意識すべきです。子供はまわりに影響されやすく、昨日まで興味を持っていたことに急に関心を示さなくなったり、逆に急に新しいものに興味を持つことも珍しくない。そこは柔軟に対応したいところです。