ひっ算だけではなく、文章題の場合も途中の式をできるだけ省略することをおすすめします。途中の式を書かないことで、先に計算した数字を一時的に頭の中に覚えておきながら、別のことを考えるという頭の使い方にも慣れてきます。解いた形跡を残すのは、何問かに1問で十分です。大切なのは、頭の処理能力を上げ、賢くなることです。
それに子供が字を書くスピードは速くありません。思考のスピードのほうが速いのです。ひっ算や式をきちんと書かせていると、書くスピードでしか思考ができなくなります。
文章題を暗算で解いている子の親に「うちの子、また計算ミスしたんです!」と言われたら、私は「計算ミスはあまり気にしないでください。考え方が合っていれば大丈夫です」と伝えています。中学受験を間近に控えた小6ならミスをしないようにするのは当たり前ですが、小4まではミスを恐れず、どんどん暗算させてください。
Case5 「図形は丁寧に、定規を使ってかかせています」
図形をノートにかくときは、できるだけ定規を使わずフリーハンドでかくようにさせてください。
小3くらいまでは、定規を使わずに図形をかくのは子供にとって難しいことかもしれませんが、小4になれば定規は使わないほうがいいです。定規を使うと、かく途中で図形の一部が定規に隠れてしまい、図形全体を把握しながらかくことができません。
図形問題が得意になるためには、頭の中に形をきちんと思い浮かべられることが大事です。そして思い浮かべられる図形をたくさんストックすることで図形センスが身につきます。頭の中のストックを使って、ノートにフリーハンドで図をかけるようになれば、図形センスがついた証拠。そのためには練習が必要です。
最初のうちは線が曲がって図がゆがんでも大丈夫。だんだん上手にかけるようになっていきます。
村上綾一(理数系専門塾エルカミノ代表)
東京に7教室ある、理数系専門塾エルカミノ代表。大手進学塾の指導経験を経て、小学生から高校生までを対象にしたエルカミノを設立。東大や御三家中合格者、数学・算数オリンピック出場者を送り出している。著作に『自分から勉強する子が育つお母さんの習慣』(ダイヤモンド社)、パズル問題集『面積迷路』(学研)などがある。
(太田あや=構成 早川智哉=ドリル撮影 教える人:村上綾一(理数系専門塾エルカミノ代表))(PRESIDENT Online)