男性と同じなら最初は支店に配属されるはずだが、実際は本部の国際金融部だった。デリバティブなど法人向けの新商品を開発する部署。研修が多かったそのころに、今も話題に上るような失敗がある。
研修には事前課題があり、上司が見てハンコを押し、翌週月曜日から研修がはじまるスケジュール。
「あるとき、仕事が忙しくて平日は課題に手をつけられないことがありました。週末に片づけようと思いましたが、ハンコは金曜日までにもらわないといけません。お客さまに出すものでもないからと思って、白紙のまま持っていって、上司に『ハンコだけ先にください』とお願いしたんです」
穏やかな上司が激しく叱った。
「きみはハンコを押す意味がわかっているんですか。全責任を引き受けるということですよ」と。「ハンコを押すということはそれだけ大切なこと。恐らく支店経験があれば、支店長にハンコを押してもらうことが、どれだけ重いことなのかが肌身で感じられていたはずなんです」
今でも当時を知る人が集まるとその話になるというから、銀行員にとって相当衝撃的なことだったのだろう。
入社6年目にハーバード・ビジネス・スクールに留学してMBAを取得。帰国すると希望していた営業部に異動するが、そこでもつまずきが……。