2017.5.3 16:02
越智俊二さんが作った陶芸作品を手に、俊二さんとの思い出を語る須美子さん【拡大】
働き手を失った家族の苦労ははかりしれない。須美子さんは俊二さんにいつも笑顔で接し、当たり前の日常生活を大切にするよう心がけた。だが、介護をしながら一家の家計を支える負担は重かった。「生活苦で自殺する人だっている。投げ出したくなることもありました。眠れない日もありました。それでも、1日1日がなんとか終わる…、そんな毎日でした」
同じように悔しい思いをする人が出ないようにと、須美子さんは平成25年、若年性認知症の場合は在職中の初診がなくても受給資格を認めるよう、法改正を求める署名活動を始めた。現在、約7万8千人分。10万人の署名が集まったら、国会に請願する予定だ。
若年性認知症、約3万7800人 診断受けずに退職する人、後を絶たず
厚生労働省が平成18~20年に行った調査では、若年性認知症の人は全国に約3万7800人、男性が約6割と推計。「認知症介護研究・研修大府センター」(愛知県大府市)が26年、大阪府など15府県で若年性認知症の人や家族約380人を対象に行った調査では、発症前に仕事をしていた人のうち、約8割が退職・休職。1割弱は解雇だった。世帯の収入は約6割が「減った」と回答し、家計の状況は約4割が「苦しい」としている。
越智さんとともに署名活動に携わる徳永響弁護士(福岡県弁護士会)は「現在は、在職中に診断を受けてもらう方向での啓発が進められているが、それでも診断を受けずに退職してしまう人は後を絶たない。そうした方への救済措置がなくてはならない」と指摘し、法改正の必要性を訴えている。
署名用紙は、http://himawari1015.cocolog-nifty.com/blog/files/3.pdfから。