企業側が、16年春闘まで3年連続でベアに応じたことで人件費負担が高まり、賃上げに慎重な姿勢を強めていることも逆風だ。実力以上の賃上げを続ければ人件費などの固定費が重荷となり競争力を失いかねないとの不安があるためだ。経団連の榊原定征会長も「先行きが不透明な中でベアは重い」との見方を示しており、実際、NECの新野隆社長はベア実現について、「企業業績から言うと厳しい」と話す。
16年の春闘交渉ではトヨタや日立製作所の労組がベア月額3000円を要求したものの、結果は1500円の回答にとどまった。企業側は前回交渉時よりも、ベアよりも手当や一時金(ボーナス)で待遇改善に取り組む姿勢を強めており、労使がどこまで折り合えるかが焦点となる。
■2017年春闘に向けた環境
【好材料】
・円安で輸出企業の収益が持ち直し
・米国経済が消費中心に堅調
・安倍晋三首相が「今年度並みの賃上げを期待」と経済界に要求
・政府が賃上げ促進税制を拡充
【不安材料】
・トランプ次期米大統領の通商政策
・新興国経済の減速懸念
・消費者物価指数がマイナスを継続
・企業が先行きへの警戒感からベアに慎重