電通のような大会社を立ち入り調査することは、「一罰百戒」の意味があるのだろう。塩崎恭久厚労相は「こういうことが起きないように再発防止をどうするか、必要なことはどんなケースでもやっていかなくてはいけない」と話した。
「三六協定」にメスを
長時間残業が横行しているのは、労働基準法36条で規定されている労使協定(三六協定)の存在がある。
労働基準法では、「1日8時間、週40時間」が労働時間の限度になる。ただ、労使協定を労基署に届ければ、上限を超えることも可能。電通は所定外月間残業を70時間(法定外50時間)と定めていたが、協定では上限がいくらでも定められることになってしまう。
厚労省は「月の残業の上限は法定外45時間以内に」と告示しているが、法的な強制力はなく、「告示に反しているが、受理しなければならない」というのが実情だ。45時間という数字は、医学的な根拠があり、この時間を超えた残業が慢性化すると、過労死の危険性が高いという。
そもそも労使協定自体が守られていないことが問題だ。三田労働基準監督署(東京)は、労使協定の定める70時間を超えて、高橋さんが「105時間」の残業を強いられていることを認定した。
今回の問題を受け、政府・与党からも「残業の上限時間を法律で明記すべきだ」「長時間労働の罰則強化を」との声が上がっている。電通への調査はまだ始まったばかり。労働局がどのような判断を下すのか注目される。