□『場の力~変化を起こすためのヒント~』
■多様性を生かした新しい働き方を問う
街づくりを本業に「その先の、オフィスへ」をスローガンに掲げ、オフィスという「場」を提供している当社にとって、「これからの企業にリアルのオフィスは必要か」「バーチャルな電子の世界だけで十分か」ということは、切実な問題です。
規格品を大量生産するために効率を追求する工場をモデルに発展した20世紀型のオフィスは、働く人の多様化、働く人のオンとオフの関係性の多様化、価値創造などの新たな経営課題に対応できなくなる可能性があります。一方で、バーチャルな電子の世界が拡大するなかで、リアルの「場」の重要性がかえって高まっています。
たとえば新しい価値の創造には、働く人の多様性が欠かせません。
ネットは自由な意見交換の場ですが、価値観や主張の近い人同士が集まりやすい傾向がある一方、リアルの「場」には、多様な人々が直接顔を合わせて異なる意見をぶつけ合うことができます。フェース・トゥ・フェースのリアルなコミュニケーションは、協働による価値創造の源泉なのです。
働く人の多様性という意味では女性や高齢者、外国籍の方、障害者らの社会参画も重要で、一例をあげれば、夕食の材料を調達できる商業施設などのように、家事と仕事との両立の観点でオフィス街に必要なものは何かを考えることも大切です。
そもそも、多様な人々が「この街のここが好き」などのストーリーを共有し、多様な価値観の交換を行うところににぎわいのある「場」が成立するのです。その意味で、都市の価値創造力向上には、多様な人々がストーリーを共有しながら、多様なチャンスに巡り合える「チャンスの花園」を形成する街づくりなりオフィスづくりが必要です。