先端にカメラを付けた管を口や鼻から入れて胃の内部を調べる内視鏡(胃カメラ)検査。来年度から市町村で実施する胃がん検診で推奨される見通しとなった。従来はエックス(X)線検査が主流だったが、内視鏡検査によるがん死亡率の減少が評価されたことから厚生労働省が方針を転換した。内視鏡の性能も向上しており、希望者の増加が見込まれる一方、検査時間の短縮や操作できる医師の確保などの課題も残されている。(坂口至徳)
ガイドライン
胃がん検診では、造影剤のバリウムを飲みX線で透視する方法と、内視鏡による検査が行われている。これまではX線検査が主で内視鏡は推奨されていなかった。しかし、今年4月に国立がん研究センターが「胃がん検診ガイドライン」を発表。「内視鏡検査は胃がん死亡率の減少に効果がある」とし、検診対象は「50歳以上」が望ましく、「検診間隔は2~3年」と明記した。これを受け、厚労省は市町村に対し推奨する方針を固めた。
日本消化器内視鏡学会評議員の篠村恭久・大阪府池田市立池田病院総長によると、「内視鏡は早期の胃がんや食道がんの病変を見つけられるうえ、検査中に組織を採取して調べられるので、病院の診療では第一選択になっている」という。X線検査では、胃壁表面の凹凸をみるが、内視鏡はその変化がまだ出ていない早期に色で見分けることができる。ただ、内視鏡を通すときには、舌の根元に触れて起こる嘔吐(おうと)反射を防ぐため、喉に麻酔をかけるなど事前処理と検査に各15分と時間がかかる。まれに管で喉を傷めることがあるため集団検診では使いにくく、これまで検診の成果を示すデータも十分に集まらなかった。