【書評】『三つ星料理人、世界に挑む。』奥田透著 (1/2ページ)

2015.1.10 12:00

『三つ星料理人、世界に挑む』奥田透著(ポプラ社・1300円+税)

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 ■空間から料理まで本物を

 東京・銀座にある日本料理店が、2013年9月パリに出店した。OKUDAという店主の名前がついている。場所はプラザ・アテネという五つ星ホテルのそば。高級店が並ぶ、シックな界隈(かいわい)である。

 店主の奥田透氏とオーナーの大徳(だいとく)真一氏は、日本の数寄屋造りで内装を仕上げることを決め、建築家と大工、左官などをパリに連れて行く。「空間から料理まで、すべて本物をフランス人に提供したい」-そのことが重要だとわかっている人たちが組んだから可能になった話である。海外に本格的な日本料理店ができるのは、いくつものよい条件が整ったときしかない。それがOKUDAだった。

 出店までの苦労は、海外での仕事を象徴するようなエピソードの連続なのだが、そこで話は終わらない。

 パリでの寿司(すし)の人気を実感していた奥田氏は、隣に寿司店も開くことになる。さらに、思うような品質の魚が集まらないと、魚店も開くことに。活(い)き締めによって、日本の魚のおいしさは際立っている。活き締めとは、魚を気絶させて血抜きをする手法で、釣り上げて氷に入れておくのとは格段の味の差がある。奥田氏はフランス国内の輸送に活魚タンクを使ったり、日本の食品メーカーに勤めていた漁師と知り合うなど、徐々に新鮮な魚の調達を可能にしていく。

予約客でもないのに「店を見たい」と来店

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