心臓の大動脈の弁が固くなり、血液が流れにくくなって心不全などを起こす重症の大動脈弁狭窄(きょうさく)症の治療にカテーテルを使って人工弁を挿入する「経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)」という新治療法が普及し始めている。高齢などで胸部の切開による外科手術が不可能な患者が対象で、患者の負担が少なく、短期間で退院できる。昨年10月には保険償還も認められ、実施病院は全国で30カ所以上に増えている。(坂口至徳)
QOLも改善
大動脈弁狭窄症は、収縮して血液を全身に送り出す左心室と大動脈の間にある大動脈弁に石灰が沈着して固くなり、十分に開かなくなる。65歳以上の高齢者の約4%に症状があると推計され、加齢とともに進行し、狭心症や失神、心不全などの症状が出れば生存率が低下する。
国内では毎年約7千人が病んだ大動脈弁を人工弁で置換する外科手術を受け、回復。しかし、ほぼ同数の患者が高齢や再手術不可能などの理由で外科手術が受けられず、症状が進行しているとみられる。TAVIはそのようなケースに有効で、これまで600例以上の手術が行われている。