腎臓に嚢胞(のうほう)(水が詰まった袋)が無数にでき、少しずつ大きくなることで腎臓の機能が低下する難病「常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)」の治療薬が世界で初めて承認された。根治には至らないが、病気の進行の速度を遅くすることが可能だ。患者にとって、腎不全による人工透析や腎移植を遅らせるための選択肢が広がった。(村島有紀)
平均50%抑制
ADPKDの初の治療薬は「サムスカ錠」(一般名・トルバプタン)。大塚製薬(東京都港区)が開発したものだが、もともとは心不全の治療薬(錠剤の利尿剤)だった。しかし、ADPKDにも効果がある可能性が分かり、10年前から米国の病院を中心に、世界15カ国約1400人以上の患者の協力を得て治験を実施。服用により、腎臓が大きくなるスピードを平均50%抑制する効果が判明し、世界初の治療薬として今年3月、日本で承認された。
初の治療薬について、ADPKDの患者団体「PKDの会」(www.pkdnokai.org)の会長、山地幸雄さん(62)は「治療薬の登場は画期的。ほかにも治療に使えそうな薬はまだある。根治治療が確立されるまでのつなぎの薬として歓迎したい」と話す。