【江藤詩文の世界鉄道旅】タイ鉄道(2)自由過ぎでしょ、車掌さん…カメラを向けたらドア全開に (1/2ページ)

2014.6.28 18:00

これが撮りたかった写真。遮るものがないと、たしかにきもちいい

これが撮りたかった写真。遮るものがないと、たしかにきもちいい【拡大】

  • 私の目には心もとなく見えるが、鉄柵があるから安全だと車掌さんは言う
  • 車掌さんに呼ばれて、いそいそとやってきた同僚
  • 私を扉のない乗降口に立たせ、隣りの乗降口からカメラに向かってポーズ。ちなみに列車は動いている
  • 列車がスピードを落とすわけでもない地点で、ものを投げて受け渡しする売り子

 定刻の2分前にフアランポーン駅を出発したタイ鉄道東北線南線快速列車135号は、順調に1時間以上遅延し、むっとするような熱気の立ちこめた車内の空気はだれきっていた。乗車してすでに5時間。観光客はほとんど乗っていない車内を2往復もすれば、乗務員も売り子ももはや顔見知りだ。

 暇を持て余し、どこまでも延びた線路を写真に収めようと、最後尾の窓にカメラを押し当てる。しかし磨かれているはずもなく、傷だらけの薄汚れたガラス越しの風景は、なんとも冴えない。

 あっと思う間もなく、ぐわっと吹き込む風にあおられた。車掌が私の肩越しに扉を開けたのだ。「これでいい写真を撮れる」。親指を立てて笑顔をみせ、きびすを返した。

 検札に来ても、ろくにきっぷを見ることもせず、おしゃべりばかりしている彼は、なんとも気ままに鉄道の旅を楽しんでいるようだ。停車駅のプラットフォームでは、わざわざ同僚を探してきて、記念撮影をしてほしいと言う。しつこいようだが、この時点で、列車はすでに定刻より1時間以上遅れている。定時運行が当たり前になっている日本人の私は焦るが、周囲の乗客はだれもいらいらしたそぶりを見せない。

吹きさらしのワイルドな“特等席”

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