そもそも「反日」活動家は自らを「反日」とは呼ばない。中国化しつつあるシベリアは早晩ロシアにとって脅威となる。尖閣上空では武力攻撃に至らない敵対行為に対する自衛権(マイナー自衛権)の法的整理が喫緊の課題だ。
だが、本書を読み日本を取り巻く現実の厳しさを憂うだけでは問題は解決しない。本書が浮き彫りにするのは戦後日本の危機感の欠如と、日本人が作り上げた心地良いシステムが現在の国際政治環境に適合しないという不愉快だが否定しがたい現実だ。中韓は人権・人道という普遍的価値を逆手に取って日本を貶(おとし)め、脅そうとしている。されば日本も普遍的価値に基づき守るべき伝統と価値を堂々と主張すべきだろう。その意味でも、本書は一人でも多くの日本人に読んでもらいたい。(産経新聞「新帝国時代」取材班著/産経新聞出版発行、日本工業新聞社発売・本体1300円+税)
評・宮家邦彦(立命館大客員教授)