■日本人の危機感欠如に警鐘
東アジアでは今、中国の台頭という巨大なパワーシフトが進行しつつある。これに対応すべく既に米国、韓国、東南アジアなどは外交軍事政策の見直しを始めている。翻って日本は大丈夫なのか。今の日本人に求められるのは、この歴史的転換期を生き延びる強固な意志と、そのための柔軟な知恵ではなかろうか。
本書は46人の産経新聞記者が日本外交の直面する諸問題を精力的、多角的な取材により抉(えぐ)り出した力作だ。各章では中国の軍事的台頭、尖閣諸島の防衛、中国の対日米諜報工作、「歴史問題」などをめぐる中韓の対日宣伝戦、中国の対日サイバー戦などに関する生の最新情報が世界各地の現場から報告されている。
これらの情報はいずれも内容的に詳細ながら、分かりやすく書かれている。国際問題を専門としない一般ビジネスマン、学生でも十分問題の本質を理解できるだろう。特に、筆者が改めて「なるほど、そうだな」と唸(うな)った部分を幾つかご紹介しよう。
《米の抗日活動家は「私がやっていることは、実際は日本のためだ」と断言した(序章)▽中国人が広大な農地を求めてロシア・シベリアに続々と渡っている(第5章)▽領空侵犯の際、空自パイロットの権限は警告射撃と強制着陸命令しかない(第6章)》