この本は、授業に登壇したゲストによって語られた、子供の頃から現在に至るまでの足跡と10年先の展望を、その熱気のまま閉じ込めていて、まさに人生の教科書のよう。ゲストたちから発せられるメッセージがとてもポジティブで、読んでいて勇気をもらえる。「好きこそものの上手なれ」じゃないけど、やっぱり活躍している人は「好きなこと」を突き詰めて磨いてきた人たちばかりだった。
僕自身、4月から多摩美術大学の教授として教える立場になるのだけれど、ぜひこんな授業にしてみたい。米ハーバードやスタンフォードの授業など、海外の大学教育に注目が集まっているけれど、こちらも負けていられない。
「日本の大学も面白いぞ!」と証明してくれたパイオニア的授業を、本書を通じて追体験してはどうだろう。自分が本当にやりたかったことは何だったか、原点に立ち返れるに違いない。(マガジンハウス・1470円)
評・佐野研二郎(アートディレクター)